Activities

Happy Hikers BAR Vol.22

date/2019_08_09 fri

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今回のハッピーハイカーズバー。場所はいつものトレネさんでした。
バートークのスピーカーは、ハッピーハイカーズ・スタッフである松岡朱香さんと、このバーの常連で僧侶でもある久木田光立さん。

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「ほとんど列車、ちょっぴりハイクのアルプスの旅」
松岡 朱香(マツオカ アヤカ)ハッピーハイカーズ・スタッフ

社員旅行に紐付けて一昨年、そして今年の6月に欧州、アルプスの山を訪れた松岡さん。「あまり歩いてないですが‥」と前置きもありつつ2つの山を紹介してくれました。
まずは一昨年に訪れたというオーストリアの『シュネーベルク(Schneeberg)』。ウィーンから1時間強でシュネーベルク登山鉄道に乗り換え。長い距離を運行するラック式鉄道ということで日本では体験できないものですね。「サラマンダー」という名称の列車は現地のトカゲをモチーフにした斬新なデザイン。道中ではブフテルンというお菓子を買って食べるのが楽しみのひとつだということで、「雪山」の意味があるシュネーベルクにふさわしく粉砂糖が雪の様にふりかけられています。
登山鉄道の頂上駅は1,800m。この山の標高は2,076mで石鎚山くらいとのことです。頂上駅からはハイクが楽しめるということでスライドでは当地の素晴らしい風景が色々と見られました。かなり大きなテラス席のあるレストランもあり、そこではやはりというか地元のビールが楽しめるそうです。肴は見かけ「ハンバーグの入ったスープ」で、オーストリア料理には「ズッペ」というものもあるようですが、ちょっと違うみたいです。ともあれあのような雰囲気で飲むビールは美味しいでしょうね。

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二つ目の山はドイツ最高峰の『ツークシュピッツェ(Zugspitze)』。こちらは今年の訪問ということで、ミュンヘンを起点に登山鉄道であるバイエルン・ツークシュピッツ鉄道の駅までは1時間半くらいということです。その登山鉄道からロープウェイに乗り換えて、見るからに急勾配な路線を一気に登るみたいですね。スライドでは岸辺のグラデーションが印象的な湖(アイプ湖)を見下ろす写真が映されていましたが、絶景であることは伝わってきます。面白かったのが当地の看板にドイツ最高峰であることが各国語で記されていて、その中の日本語表記では「ドイツのてっぺん」とあり、そうなった制作の経緯は気になるところです。
やはり山頂付近にはレストランがあり、やはりビールやソーセージが楽しめるとのこと。美味しそうな写真が続きます。
ちなみにちょっと調べると、この辺りは「バーバリアン・アルプス」という呼称があるそうです。バーバリアンは蛮族のことなので歴史的に意味のある山域なのだろうな、などと思ったりもしました。

アルプスでは登山と鉄道の長い歴史があって、スキーなどのレジャースポーツの広がりもあり、高所へのアクセスがとても行き届いているのですね。そうやって高地での絶景や空気を楽しめるとなると、自分たちがふだん暮らしている街と山の距離感が、日本人とはまったく違うものになるのだろうなと思いますね。

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「七面信仰と山岳信仰について」
久木田 光立(クキタ コウリュウ)(日蓮宗僧侶/修法師/霊断師)

久木田さんはこのハッピーハイカーズバーの初期からの常連さんで、ハイカーであり、さらには僧侶ということで「登山を通して山岳信仰・山岳宗教について研鑚を重ねている」とのことです。今回はご自身のことでなはく『山岳信仰』について語ってもらいました。冒頭で「ちょっと講義のようになりますが」という前置きがあり、スライドの内容を簡易にまとめたプリントも配られます。その内容はいくつかの項目にわけて語られました。
「山を信仰対象にすること」については、火(火山)、水、岩、木といった自然の事象や恩恵への畏怖、畏敬の念があり、人智の及ばないものへの崇拝が元にある。また「山岳信仰の形態」では狩猟と農耕についてのものを例に挙げ、狩猟民にとっては狩る対象の動物をもたらす場所が山であり、その動物(命)を育んでくれることに感謝を捧げる。農耕民は山からもたらされる水が信仰の対象に。ただし、それら野生の動物や水は時に災厄をもたらすものでもある、ということが畏怖、畏敬ということに繋がるのでしょう。「日待ち信仰」についても話がありましたが、いわゆるご来光(日の出)は多くの登山者にとっては信仰とまではいかないにせよ、風習として浸透しているものだと思います。

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時間的な制約もありかなり掻い摘んだ内容にとどめるよりなかったのではないでしょうか。しかし実はここからが今回のメインとなります。久木田さんが今回集まった方々、さらにスタッフにも向けた「安全祈願」をしてくれることに。
まずは全員で合掌をしてから、久木田さんがプロジェクターで壁のスクリーン映し出された「ダイヤモンド富士」に向かって読経を始めます。その静かな導入から次第に鳴物を使って大きな音が響く様に。この音の激しさにも意味があるのだろうと感じます。それからあの場にいた人たちに向けた祈願が読み上げられる段に至るのですが、こうやって自分たちに向けられた祈願というものに不思議な感動がありました。

世間的にはお盆休み前の週末ということで若干少ない参加者数ではありましたが、そのお盆の前というタイミングも込みでとても貴重な経験になったのではないでしょうか。

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さて、今回は本当に振り幅の大きい2本のトークでしたが、こうしてまとめているとその対比が興味深いです。「山」という地域、存在に対する距離感、態度などの差異がそれぞれの地域、文化において生じるのは当然のことなのでしょう。またこうして「楽しむことや親しむこと」に特化したような形態、文化がある一方で、日本では自然への畏怖と畏敬が信仰というかたちで連綿と続いてもいる。色々あるけれど、山というものに積極的に関わっていこうという態度として繋がっているのかなと思いました。
次回予定は北九州での開催になります。詳しくはFacebookページでご確認ください。

テキスト/内田タケハル 写真/豊嶋秀樹

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