Web Magazine for Kyushu Hikers Community
ハイキングスタイルやギアのこと、
ウルトラライトハイキングにまつわる僕のつぶやき
沈む夕暮れに背中を押され、テントを張る予定していた場所へようやく到着しようとしている。
食事の時以外は常に歩きっぱなしだったのですでに体はヘロヘロである。
振り返ると前回のハイキングからはかなりのブランクがあった。今回の縦走は、この原稿を書くための取材という大義名分に気持ちがたかぶっているうちは元気だったが、正直な身体はすぐに根をあげてしまった。
西の十坊山からスタートして女岳、長野峠を足早に過ぎ、羽金山でアンテナ塔を見上げつつ、そんなこんなでようやく雷山山頂である。
それに、暗くなってからこんなに歩くつもりはなかったので、ライトは簡易的なものしか持ってこなかった。そのせいで、見えにくい足元を気にしながら雷山の最後の上りに幾度となく足を止め、夕日を振り返りながらこの日最後の力を振り絞った。
「BIG3」と呼ばれるパッキングの中で特別な立場でカテゴライズされるものがある。
①「テント」②「寝具」③「ザック」である。これらはパッキングの中でもっともかさ張るし、重量もあるものだ。同時に、「BIG3」は、山を歩き、山に泊まる中でとても重要な道具でもある。
キツい登りや疲れ果ててしまったとき、「この背中の荷物が少しでも軽くならないのか?まるで何一つ背負ってないかの如く…」とブツブツと自問自答を繰り返すのは私だけではないのでは?
もちろん、そう唱えてからといって、ザックの重さは減りはしない。そのかわりに、水や食糧のように増えたり減ったりせず、ハイキングの始まりから終わりまで、常に背中や肩にのしかかる「BIG3」を見直す事により、快適なハイキングのためのさらなる軽量化とその意義を考えてみたい。
というわけで、今回は「BIG3」のうちのひとつであるテントの話をしよう。そしてもちろん、ULといえばウルトラライトテントなのだ。
ULハイカーはウルトラライトテント(シェルター)が好きである。「BIG3」はザックの中の総重量だけでなく、総体積のうちの大きな比率を占めている。それらを軽量化&コンパクト化できればかなり大きな恩恵を得ることができる。一般的にイメージされるテントといえば、本体の上にフライシートをかぶせるダブルウォールという2枚構造だったり、長いポールを組み合わせて使うドーム型のものが耐候性に優れるといわれている。そして、もちろんそれらのテントにはちゃんと床もある。いっぽう、ウルトラライトテントの多くは、フロアレスと呼ばれる床の部分がなく地面がそのままむき出しなっているものだったり、トレッキングポールを支柱としてたて、テント本体の生地は薄く、フライシートのないシングルウォールだったする。見た目からして軽さにパラメータを振り切ったようなデザインだ。
では、ULハイカーはなぜフロアレスやシングルウォールを好んで選ぶのだろう?
そこで、ここではウルトラライトテントの「良いところだけ」をいくつか紹介していこうと思うw
フロアレスのシングルウォールというだけでもかなりの軽量化を稼げるのに、最近ではテントで使用されるに一般的だったシルナイロンという生地に代わり、ダイニーマコンポジット(DCF/旧キューベンファイバー)が、さらなる軽量化を推し進めたことはハイカーには周知のことだろう。
高価ではあるがDCFを使った幕は強く、そしてめちゃくちゃ軽い。その軽さは今や一人用で100g台なのだから。
そして、それらは非常にシンプルに作られていることも重要な点だ。
縫製箇所や使用するパーツを極力少なくするためのメーカーの工夫が各所に散りばめられている。同時に、シンプルなつくりには、破損する可能性のある箇所を少なくし、万が一、壊れたときにも補修がしやすいという利点もある。
スタッフサックに入れてザックに放り込んでも小さいためにかさ張らない。これってすごく重要で、パッキングのときにザックに収めるのがすごく簡単。
それでは、ウルトラライトテントと一般的なテントの収納時の大きさを比較してみよう。左がフロアレスシェルター、右が床付き蚊帳つきテントだ。サイズの参考としてウォーターボトルと一緒に撮影した。
パッキングのしやすさは歴然である。前述したが「BIG3」は、かさ張るものが多いカテゴリーだ。このコンパクトっぷりは使用するザックそのもののサイズをも変えてしまうほどの違いがある。
結露しないためにはというより、結露しても対応が簡単である。バッサバッサと払えばあらかた水は落ちるし、幕が濡れたままだったら、そのままザックの外側のメッシュポケットに入れておいて、少しの休憩の時などにさっと取り出して乾かしておいたりもできる。
これはタープや、それに近いシェルターに当てはまる利点だ。きちんと対策すればいろんな場面でもそれなりに快適に過ごすことができる。風の影響を受けやすいときは長いペグや太いペグを状況に合わせて使用したり、雨のときは風向きを考え出入り口を風下に設置するなどでやり過ごせる。また、小屋に泊まるつもりのときでも、ザックに忍ばせておいて天候が良ければテント泊にするというやり方も、邪魔にならないサイズのおかげで可能ではないだろうか。
僕の場合は、九州での使用を考えた時スリーシーズンはzpacksのヘキサミッドポケットタープwithドアを使っていて、虫が居そうだなと考えられる時期はバグビビィ(蚊帳付き寝袋カバー)を併用してます。そして冬の時期はより耐候性に優れ、かつシェルター内を広く使いたいためマウンテンローレルデザインのデュオミッドを使用する事が多いです。
九州では真冬以外であればフロアレスやシングルウォールを導入しやすい環境だと個人的に思っているので、まずは季節の良い低山で1泊ぐらいからぜひともトライしてみてください!
最後に、僕の「今、買うならオススメのシェルターベスト3」をあげさせてもらって終わりにしたいと思います!
メーカー:zpacks
モデル:ヘキサミッドポケットタープwithドア
重量:196g / スタッフサック、ガイライン込み実測
僕がスリーシーズンでメインに使っているテントです。軽さ、張ったときのサイズ、収納時の小ささ、設営の簡単さ、雨に対する耐候性、見た目w。全てにおいてステータスが高得点。今回の縦走時のテントもこれを使っています。
メーカー:マウンテンローレルデザイン
モデル:デュオミッド
重量:459g / スタッフサック、ガイライン込み実測
僕が主に冬場に使ってるテントです。
二人用を想定したサイズなのだけれど一人で使うことによって安定の安心感と居住性を得ることができます。かといって大きすぎないサイズ感が○
言い換えると一年中使える弱点のないアビリティを備えてます。
メーカー:マウンテンローレルデザイン
モデル:トレイルスター
重量:577g / スタッフサック、ガイライン込み実測
五角形の形状と大きめのサイズが悪天候時の安心感そして居住スペースの広さを確保してくれます。高く張って居住性を高めたり、低く張って耐候性を高めたりアレンジもやり易いのが○。
若干のかさ張りと重量は否めませんが張り姿はNo.1っていうくらいとてもカッコイイ幕です。
テキスト・写真/吉田亮太郎
プロフィール
吉田亮太郎(よしだ・りょうたろう)
インスタグラムでは「moss_hikes」の名前でULバックパッキングを全力模索中。
半分に切った歯ブラシ、背中の空いた寝袋、中途半端な長さのペラペラなマット。
すべて満たされてはないけれど、私は元気です。