Web Magazine for Kyushu Hikers Community
ハイキングスタイルやギアのこと、
ウルトラライトハイキングにまつわる僕のつぶやき
2日目の朝、前日とはうってかわって真っ白いガスの中にいた。薄暗い中を藪漕ぎしながら進み始める。
雷山から井原山までの縦走路はクマザサに覆われていて、立ち込めたガスとひんやり冷たい朝露のせいもあってあっという間に全身がべっとり濡れてしまった。ときおりメッシュポケットから濡れた顔を拭くべく取り出す、わずか8gのタオルはすでに水気をふくみずっしりと重く感じた。
使用頻度が高く、洗濯をしすぎてぼろぼろに使い込んだその「ライトロードタオル」、こいつがなぜか手放せない。
思い返すに、東京は三鷹にあるハイカーズデポで初めて通販した時におまけで付いてきたのがこのタオルだったと記憶している。そんなおまけで頂いたギアに妙にほれこんで、ザックのメッシュポケットに常に忍ばせておくお決まりのギアになっている。
こういった「思い入れのあるギア」があるというのはとても素晴らしい事だと思う。
世間の評価とは無関係に、僕にとっては重要なもの。
前回ピックアップしたpa’lanteのザックや青いポケットタープもそうだ。色々使ってきた中でコレに落ち着いたものもあれば、コレしか使った事がないけどとにかくこれが最高!というものもある。
今回はそんな「ごく個人的に」思い入れの強いギアを紹介したい。
メランザナはアメリカのコロラド州リードビルに拠を構えるフリースウェアメーカー。
僕がこの「マイクログリッドフーディー」を知ったのはJohnZ(ジョン・ズィー)という僕にとって憧れのカリスマULハイカーが自身のパッキングリストに入れていたのが始まり。
Youtubeで彼の投稿を観ていると、ふと目についた茶色で野暮ったいクタクタのフリースに「メランザナ? なんやろ? 検索してみよう」という好奇心からの出会いだった。
通気性に優れたそのフリースは行動着としてのアウターにとても効果的で、暑すぎず寒すぎずとても具合が良いのだ。
パッキングに向いてる防寒着は、小さく収納できるダウンや雨に強い化繊というイメージが現在の主流だ。かさ張るフリースは敬遠しがちなポジションにあったが、彼のおかげで再検討のステージに格上げされた。
そして今、国外では小規模のフリースウェアファクトリーが次々に生まれているのも特筆すべきだろう。
現在のULハイキングギアの最重要バックパックメーカーと個人的に思っている「パランテ」の比較的新しいモデル「ウルトラライト」。
パランテも先述したハイカーJohnZやjupiterhikes、wilderboundといった、イカしたハイカーがこぞって使っていたバックパックで、彼らに影響を受けまくってわざわざアメリカのサイトから購入したのを覚えている。
この「ウルトラライト」はウエストベルト無し、メーカー公表26リッター、フレームレスと名前の通りウルトラライトに特化したミニマム仕様となっている。ディテールにおいてもボトムとハーネスのポケットが革新的である。パランテは初期の「シンプルパック」から、より使いやすく進化した後継にあたる「V2」へ、そしてより大容量の「デザートパック」をリリースし、またファストパッキングに特化した「joey」、そして更さらにミニマムなこの「ウルトラライト」へと、昔からのULの系譜をしっかり受け継ぎながら現代に通用するものとして再構築しているメーカーなのだ。
UL好きにはおなじみのゴッサマーギア。バックパックで有名だがトレッキングポールも昔からリリースしていて、ファンにはすっかりおなじみとなっている。他のトレポに比べたら高額な、運よくゲットできた高嶺の花を今でも大切に使ってます。
持ちやすいグリップ。カーボン製で軽さ、シンプルさ、頑丈さは故障知らずのレギュラー枠。ロゴはすっかり剥がれてしまったけどこのシュッとした見た目が大好きな2分割モデル!ラバーブーツ、ストラップ(MYOG)込みで1本114g!軽い!
自転車のパーツにも使われる軽量の硬材といえばカーボン。その硬く軽いカーボンをカップのフタに使ってみようとたのがこのアイテム⁉︎ 円型にくぼみを作る技術なんて僕は他に見たことがないのだが、純正のフタと比べてわずか7g程の差しかないのだが、されどの7g、その発想と技術に脱帽なニッチなアイテムなのである。様々なカップに対応するサイズ別に売られていたのだが、今は残念ながら廃盤となってしまった商品。
ULハイカーはチタンとカーボンにはめっぽう弱いし、その組み合わせはかっこよすぎるので復活を望みます! ルタロクラさん!!!
みんな大好きカルデラコーンで有名なトレイルデザインが販売しているこの「ウルトラライトナイフ」は、本体重量がわずか3g! 小さいし邪魔にならないし見た目もかわいらしくてGOOD! 僕はいつも首からぶら下げています。ウインナーを切るのもガイラインを切るも僕はこれ一つ、刃物はこれだけ。
あとがき
「軽さは正義」と言われる「ULの掟」からすると、必ずしもクラスで一番の優等生ではないこれらのギア。しかし、そこには作り手の思いが詰まっていたり、ハッとするような工夫があったり、不器用だけど憎めなかったり、軽さを追求する中でも切り捨てたくない「愛」を感じてしまいます。
今回は自身のパッキングリストを見返しながら、そんな個人的こだわりのギアを5点ピックアップしてみました。思い入れたっぷりのそれぞれが替えの効かない「僕のEssentials」なのです。
テキスト・写真/吉田亮太郎
プロフィール
吉田亮太郎(よしだ・りょうたろう)
インスタグラムでは「moss_hikes」の名前でULバックパッキングを全力模索中。
半分に切った歯ブラシ、背中の空いた寝袋、中途半端な長さのペラペラなマット。
すべて満たされてはないけれど、私は元気です。