Web Magazine for Kyushu Hikers Community
MoonlightGear福岡店の店長が綴る
現在と空想の汀を旅する山行記
テーブルにある白いマグカップから立ち上る湯気。
柔らかい光がカーテン越しに薄暗い部屋を照らして
「冬の朝」がついに来たなーと思う今日この頃。
止まらないあくびと気怠さを誤魔化しながら支度を済ませ上着を羽織り玄関を出る。
乾燥した冷えた朝の空気が肺に入ってくる。
車のドアに手をかけたその瞬間、
バチっと。
ほら〜。
大して痛くないのに大袈裟にリアクションする。
生きている間にたくさん経験する静電気。
起こる場所とタイミングはわかっているはずなのに
忘れた頃にやってくる静電気。
人との間に起きる静電気は「痛っ」って言いながらも
なんかお互い笑ったりするあの間が結構好きだったり。
パチっと。
1秒くらいの出来事で全意識を引っ張る静電気ってすごい!
そんなことを思っていると昔テレビで見た磁場の話を思い出した。
僕はスピリチュアルな話はそこまで興味がないのだけど
磁場の話だけはずっと気になっていた。
それは自然の中に入るとき、海や川はもちろん、
山の中で遊ぶようになってからは特に強く感じるようになった。
陽が当たっていなくても心地よく感じる場所。
湿気が多い苔むした場所でもそれはあって。
逆に太陽が当たっているのに居心地が悪かったり
気持ち良いはずの風が不快に感じたり。
この感覚ってなんなんだろうと思い始めたのがきっかけで。
自然の中で起こる不思議な感覚を調べていると、
磁場と周波数に繋がったお話。
知っている方も多いと思うけど、
もともと人間の体には微弱な電気が流れている。
この電気は体の代謝や神経伝達といった重要な役割を担っている。
と言っても体のどこかに発電所があるわけではなく、
神経細胞自体がもともと電気を持っており、
常にプラスとマイナスがバランスを保ちながら存在していて。
今回は体に帯びる電気が自然界にある生態系が成す磁場と周波数に
どのように関わり影響を持つのか自分なりに体験したことを書こうと思う。
科学的根拠ではなく体験したこと、感覚のお話です。悪しからず。
山を歩いているとき、
ただ歩いているだけなのに気持ち良い。
気持ちよく感じる理由はたくさんある。
気温や匂い、肌で感じる風や視覚で楽しむ景色など五感を使うとき。
それにもっと細かな点で言うと
ハイキング中は体を動かすことで体温が上がり血液の流れがよくなり免疫力が高まる。
そうすると体を構成する約60兆個もの細胞に栄養と酸素を送り届け、
かわりに老廃物を持ち帰る働きをしてくれている。
上記の内容だけでも気持ちよく感じる理由としては十分で
体の外にある感覚と体の内側にある機能を同時に使うハイキングは
ストレス発散に最強なんじゃないかとも思っている。
少し話がずれてしまったけど
体の熱が上がると免疫力向上だけでなく
熱放射と言って微力な電磁波や赤外線が外側に出ていく。
サーモグラフという赤外線カメラで人間を撮ると、
暗闇でもはっきりと写るのはそのため。
体内部の働きで体外部に熱や電磁波を出しているわけ。
アストラル体とエーテル体っていう表現もあるけどこれ言い出すととても長くなるので
別の機会にしますね。
これに似た構造が自然界にもあって地磁気って言うんだけど、
地球内部の液体のニッケルと鉄が対流することで
発生する電流によって生成される磁場のこと。
「地磁気」が存在することで
地球が棒磁石のようにN極(南極)とS極(北極)を
持ち地球の周りに磁力の世界を形成している。
こいつのおかげで宇宙線や太陽放射線などが地球に直接やってくるのを
防いでくれてるんだけどオーロラは宇宙線や太陽放射線がこのバリアに当たったときに起きる自然現象。
ちょっと話が大きくなってきたので
山の中に話を戻そう。
樹林帯が多い日本の山域。
森の生態系を見てみると興味深いことが。
地面を覆う落ち葉はミミズや土壌微生物の活動を活発化させ、
その結果、落ち葉が効率よく分解されて土に還る。
この過程で生まれる栄養は新たな植物が芽吹く力となる。
さらに樹木はリスや野鳥、昆虫といった小動物の住みかとしても重要な役割を果たしていて。
枯れた樹木でさえも、その内部が分解されてできる洞(うろ)はキツツキやフクロウの巣に、
根元の洞はアナグマの巣穴になっている。
山中では樹木を中心に多様な生き物が複雑で豊かなつながりを築いている。
この生態系という形もよく考えてみると一つ一つの生命、個々が動くことで出ているものがあるな、と。
それが音。
鳥の囀り、木々や葉が風で擦れる音、沢のせせらぎもそう。
森の世界が一つのオーケストラのようでハイキング中はこの自然が織りなす音を聴いて気持ちよくなっている。
ただ森という世界はこの生態系だけではなく
見える世界とは別に視覚だけでは捉えることができない見えない世界が存在している。
霊的なもの(笑)ではなく地中のお話です。
植物が根から水分や栄養を吸収していることは広く知られているが、
その根の先端では「菌根菌」と呼ばれる微生物が密接に共生している。
この微生物は、植物が光合成で作り出す糖を分けてもらう代わりに、
窒素やリンといった重要な栄養素を植物に提供している。
最初に聞いた時は「なんだって!?」と
かなりの驚きだった。
地中でそんなギブアンドテイクな関係が築かれていたとは。
最近の研究結果で、こうした地下の微生物が地上の森林の構造や種の分布といった
大規模な特徴にも大きな影響を及ぼしていることが少しずつ解明されてきているらしい。
植物の根って本当に凄くてもっと話したいんだけどこれも話が逸れるのでまた別の機会に。
とにかく、
この世界はスケールに関わらずミクロな世界で起こることがマクロと繋がっている。
そして地中にある生態系からもきっと何か出ているに違いない。磁場の正体は地磁気だけではなさそうだ。
炭素が多い場所が〜とか、イヤシロチとケガレチのお話に繋がるんだろうけれどこれもまた別の機会に。
そろそろ終盤!
山の中で過ごす時、音を聴いている話をしたけれど、
それは耳で聴いているのか?
人間に聞こえる周波数はおよそ20kHzが上限でそれ以上の高周波は聞き取れない、そう耳では。
音は振動で、鼓膜だけでなく体全体でその振動を受けている。
今まで話してきた多様性あふれる自然界で発生する音にハイパーソニック・サウンドというものがある。
複雑に変化する超高周波のことで、様々な生き物、立地、環境が出す音がそれを生み出している。
これは人間が聞き取れない音だけど振動は体が感じているわけ。もっと細かく言うと細胞レベルで感じているらしい。
動物の免疫力をコントロールするソマチッドが喜ぶ音とも言われているけど、リラックス効果や好感形成を得られる説があるんだって。
山を歩いているとき、
ただ歩いているだけなのに気持ちが良い。
それは自然が出す周波数に自分の体に帯びる微弱な電気が共鳴しているんだと今では思っている。(個人的な考えです。)
音と電気。
地上と地中。
地球と宇宙。
全てが共同体なんだと改めて思える体験が山ではできるんだなぁと。
僕は人間という動物だ。
思考以外にたくさんの感情感覚がある。
あれこれ考えるのではなく自然の中に入った時こそ感覚に頼って過ごす。
気持ち良い、気持ち悪い、判断基準はそれだけでいい。あとは感覚を解放すること。
視覚に頼り切っている日常から離れ他の感覚をフルに使って過ごす。
匂って聞いて、そして肌で感じる。裸足になって歩くだけでも捉えれるものは大きく違う。
体を形成する一つ一つの細胞には仄かな電気と一緒に何世代にも渡り紡がれてきた経験値が刻まれている。
自然界の「流れ」に共鳴したときに呼び戻せる動物的感覚は火を起こし動物を捕え星を読んで旅をしていた祖先の記憶かもしれない。
自然を直に感じることで自然はそれを可能にしてくれる。
本来のあるべき姿に戻してくれる。
そこで何を感じ、思うのか?
これほど自由な気持ちでストレスなく過ごせる瞬間は他にない。
本来誰もが持っている感覚は澄ませるだけで気づける世界がたくさん存在している。
街中にずっと居るとそれは薄れて消えてしまうようだ。
大好きな自然と自分を繋げてくれる存在が電気と音だったって、ちょっと面白いなと思って
今回は書きました。
最後までどうもありがとう!
次回はハンモック泊を通して感じた様々な「揺れ」について書こうと思います。
お楽しみに〜。
テキスト・写真/横山誠二
プロフィール
横山誠二(よこやま・せいじ)
MoonlightGear福岡店店長
福岡県出身
線好き
美容師をやったり
建築の写真撮影など
線に対して強いこだわりを持つ。
山との出会いは写真をきっかけに
稜線に魅了されたから。
今年から雪板をスタート。
雪上にできた放物線に興味を持つ。