Web Magazine for Kyushu Hikers Community
25年ぶりにフィンランドを訪れている。
古い友人の誘いだ。フィンランド北部のラップランドでのスキーツアーがメインディッシュとなる旅だ。
ラップランドは、スカンジナビア半島北部の伝統的に先住民族であるサーミの人々が住む地域を指す。北緯69度の北極圏に位置する湖「キルピスヤルヴィ」がこの旅のベースとなる。
地図を広げる。無数の湖と小高い丘のひしめく中で、ひときわ目を引くテーブル上の大地が、キルピスヤルヴィのかたわらにそっと横たわるサーナ山である。サーナ山付近には緩やかな丘陵地帯を縫うように多くのトレイルがあるが、雪で覆われたこの時期は、どこをどういこうがまったく自由な世界となる。
どちらを向いても広大すぎて距離感のつかめない、非現実的な景色の中に身を置いていると、空間感覚に同調するように時間感覚までがぼんやりとしてくる。ここでは時が流れていないような、と表現したらいいのだろうか。
地質学的に20億年という、途方もない前から存在している山々を前に立ちすくむ時、それまで身を置いていた世界がどこか遥か遠くのものに感じられる。
現代人の知覚を超えているのだろうかなどと、地形に沿って水平方向に広がる思考を巡らす。
テキスト・写真/豊嶋秀樹