Activities

Happy Hikers BAR Vol.23

date/2019_09_20 fri

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9月のHappy Hikers Barは久しぶりの北九州開催でした。
会場は前回同様、小倉駅近くのコワーキングスペース秘密基地さん。
小雨が降ったりやんだりする天気が涼しくて、秋の気配が感じられる夜でした。

この日はロングトレイルナイトと称して、アメリカのロングトレイル帰りのゲストスピーカー二人に話していただきました。

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「あまり誰も語らないパシフィッククレストトレイルの話」
OSAMU AKITA / trail name "shuu”

2018年に歩いたというPCT(パシフィッククレストトレイル)の話をしてくれたのはシュウさん。
シュウさんのスライドは、ネット上の他の記事なんかに比べると、圧倒的に人の写真が多いのが特徴でした。
スタート地点で出会った74歳のハイカー「イルシブ」、PCT3回目のベテランハイカー「ストンパ」、リタイヤ後にヒッチハイクで拾ってくれた「マギー」、逆方向にスルーハイクしていてすれ違った「ウォーターメロン」。
たくさんのトレイルエンジェルやハイカーとの出会いが、PCTの思い出のほとんどを彩っているんだと感じました。

さらには旅の前後で激ヤセした自分の体の写真、はじまって3日目に入ったレストランで、食事しながら気持ちが折れて帰りたくなったという気持ちを語るシュウさん。出会ったハイカーから「一日一日を楽しんで歩いて過ごすこと」が大切なんだと気づかされて、気持ちを持ち直したそうです。

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話は進み、みんなが好きなバックパックや靴などのギアの話へ。
ワシントン州に入り、渡らなかった橋の写真を見ながらリタイヤしてしまったことを話すシュウさん。その顔は妙にスッキリしていて、「スルーハイキングの〈ゴールは自分で決める〉ということに気づいたんだ」と話していたことが印象的でした。

最後に、長期間のハイクを終えて燃え尽きてしまい、その後どう社会に適合していけばいいのかわからない「ハイカーシンドローム」になってしまったという話で締めくくったシュウさん。生々しくも人間臭い、まさに「雑誌や本には書いてない」リアルなトークでした。

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「アパラチアントレイル 3,500kmの旅」
丹生 茂義

二人目のトークは、丹生さんです。
「アパラチアントレイル(AT)ってどんなトレイル?」という説明からはじまり、場所や距離を聞き、トレイルを「標高は低めで、樹林帯が多くて、街が近い、日本の山に近い印象」と説明してくれたときに、聞いていた人たちは少し安堵した表情に。

ロングハイキングの魅力を「圧倒的自由」と話す丹生さん。「好きなだけ歩いて、疲れたら休憩し、寝たかったら眠り、歩きたいだけ歩く。好きなところにテントを張る。すべて自分で自分の行動を決める。その選択に責任を持って日々過ごす。すべてを自分で決める贅沢な時間です。そういう時間を日常として感じられる、そこがロングハイキングの魅力の一つだと思います。」という言葉に大きくうなずく人たち。

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続けて魅力のひとつに「出会い」を挙げてくれました。
トレイル上に置かれている補給用のウォーターボトルの向こう側に感じる人の気配、セクションハイカーが置いていったビールに添えてあるメッセージカード、岩の上に置いてあるフルーツ。トレイル上で起こる奇跡、トレイルマジックの喜びを、思い出しつつ語る丹生さんはとてもやさしい笑顔でした。

今度は出会ったトレイルエンジェル(トレイルマジックする人)たちの紹介に。近くの街に住んでいるおじいさん、一緒に歩いてたけどリタイヤしてトレイルエンジェルとして戻ってきたハイカー、寝泊まり・食事あらゆる世話を至れり尽くせりしてくれるけど自分と同じ髪型にしてくるモヒカン頭のおじさん。出会った人たちとの会話の内容をじっくりと、時には笑いを交えつつ伝えてくれます。
街からヒッチハイクで乗せてくれた人は、去年にATを踏破した経験のある人だったらしく、「そのときに親切にしてもらったことを恩返ししているんだ」と。トレイルエンジェルたちのやさしさは、自分が受けたやさしさのバトンだったことに気づく一節でした。

最後にムービーで締め。トレイルを歩くところを少しずつ繋げたもので、写真よりももっと強く一緒に歩いているような感覚を感じていると、映像はゴール地点のMt. Katahdinへ。まぶしい太陽の光に包まれる山頂。「以上です」と締めくくられたトークは、実に切れ味の良い終わり方。
丹生さんの穏やかで淡々と話す口調と、トレイルの美しい写真を見ているとだんだん「一緒に旅をしているような感覚になる」不思議なトークでした。

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トークが終わった後も、ゲストスピーカー2人はさまざまな質問攻めに(笑)
遠い世界の憧れが、身近な山のような感覚に変わったからでしょうか。会場内はにぎやかな会話に包まれ、あっという間に夜は更けていきました。

テキスト・写真/渡邉祐介

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