Echoes

連載僕は山を走り始めた

50歳を目前にランニングに目覚めた
おっさんの日々のあれこれ。

7F.K.T.

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〝知りうる中で最速のタイム〟

前回ご紹介した、僕が昨年より始めたもうひとつの趣味、ポッドキャスト。飽きやすい僕もこの半年はまじめに毎週月曜日に配信している。ということはもちろん毎週収録している。今回は最近の収録について書いてみようと思う。

みなさん、「F.K.T.」って聞いたことがあるだろうか?トレイルランナーだと知っていると思うが、「Fastest Known Time」の略称で〝知りうる中で最速のタイム〟という意味。トレイルランニングや山登りなどのアウトドアスポーツにおいて、ある特定のルートやコースを、そのルートを通る全ての人の中で最も短い時間で完走することを目指すチャレンジのことを指す。

ランナーの間でよく使われているのが「Strava」というアプリ。走ったルートや時間・ペース・累積標高などが記録でき、フォローしている人の記録が見られ「〇〇さんは今日どこを何キロ走ったんだな」とわかる。このStravaに「セグメント」と呼ばれる「ある区間ごとに分割してその区間でランキングされている箇所」がある。
いつも走ってるコース上にあったりするので、誰でも簡単に何度でもチャレンジできる。

image Stravaのセグメント画面

このセグメントのような〝ある特定のルートやコース〟を日本各地で設定して、その最速タイムを記録し続けてるランナーがいる。2003年に創設された、標高の高い山岳地帯を舞台に行われるスカイランニングと呼ばれるレースで世界一位(2019年)になった上田瑠偉くんである。

ハイカーのみなさんにわかりやすく説明すると、瑠偉くんが走っている競技種目であるスカイランニングは一般的なトレイルランニングよりも険しい山道や崖などの悪条件で、高度が急激に変化するような厳しいコースで行われるのが特徴。スカイランニング公式HPでは以下のように説明している。

「山岳スポーツであるスカイランニングでは、水平距離よりも垂直距離や標高差が重要な要素となります。つまり、スカイランニングにおける「ランニング」の意味は、陸上競技とは異なり「走る」というよりも「駆け登る(下る)」ということになります。水平方向への走りやすさは求めていないため、競技会においては急峻でテクニカルな斜面や標高2000m以上の高山をコースにする場合が多くなります。(引用 https://skyrunning.jp)」

つまりエグい!心臓がはちきられんばかりのキッツい競技だ。このスカイランニングの種目において瑠偉くんは2019年に世界選手権でアジア初の年間王者に輝いている。それ以外にも戦績が凄すぎて、ご紹介したいが書いていたらこのコラムそれだけで終わりそうだ。なので、割愛する。ぜひ、調べてみて。

世界一のランナーが日本各地のローカルトレイルコースに最速記録を刻む。

その瑠偉くんが、コロナ禍で大会がのきなみ中止になった中、全国のランナーたちのモチベーションアップにもなるのではと始めたプロジェクトが「Japan F.K.T. Journey」。全国に世界一のランナーが目標を刻むというコンセプトのもと、2020年のスタートから現在16県21の記録が刻まれている。
僕もコロナのおかげでUTMFは2回、トレランやマラソンも片手じゃ足りないくらい流れた。大会がないと確かにモチベーションも落ちる。逆に大会がないことで気楽だったが、今年のマラソンのタイムは始めた頃と変わらないくらい落ちてしまった。モチベーション大事。

ということで、今回そのF.K.T.アタックが九州の佐賀と長崎で行われるということで、長崎の方へ行ってきた。

やってきたのは大村市。大村って魚のイメージ。一度も食べたことがないけど。
長崎って結構きつい山あるんよね。もう街中から坂が多いし。長崎の人って坂が多くてチャリ乗るところなくて乗れない人が多いとか。ほんとかいな。逆に坂の上まで押して乗って降りるバックカントリースタイルは流行らなかったのか、、と聞きながら想像した。どうでもいい。何も大村市のことを語っていないw

瑠偉くんのトークイベントと交流会(飲み会)が趣のあるお店で行われ、トークイベント前にポッドキャストの収録をさせてもらった。瑠偉くん、速いのは脚だけじゃなかった。頭の回転もめっちゃいい!よどみなく言葉が出てくるし、記憶力もハンパない!聞けば生徒会長だったとか。さすがね。僕はと言えば最近言葉がすっと出てこないw。人の顔と名前は昔から覚えきれないしね。おっちゃん、がんばれ。

image 瑠偉くんのトークイベントの様子。瑠偉くん、しゃべりがうまい!
image 地元長崎のトレイルランナーたちがたくさん参加。すごい「和」w

会には長崎のトレイルランナーたちがたくさん集まりにぎやかだった。今回F.K.T.のコースの選定やトークイベント、交流会等の準備を進めたのは長崎トレランパーティーという地元のトレランコミュニティのみなさん。さまざまな職業や年齢の人たちがトレランという共通の趣味でつながり合ってるのっていいね。ハイクも同じですよね、趣味が同じだと話も弾む。

image 地域のトレランコミュニティとの交流もF.K.T.の楽しみの一つだね。

さて、翌日。いよいよF.K.T.アタック。
このアタックに向けて記録用にカメラを持ったランナーが何人もコース上に配置されている。世界一のランナーを走って追って記録する。なんとも超アナログな原始的なスタイルだろうかw しかし難易度は超高い。九州を代表するランナーが2名、一番長いセクションを追うが最大にして6分着いていくのがやっと。世界一のスピードは尋常でない。ちなみに僕なら10秒もついていけないレベル。

image 入念に各スタッフの動きを確認する長崎トレランパーティーの小林誠治さん。
image ランカメの待機場所と時間、サポートスタッフの配置まで秒刻みで指示してある香盤表がすごかった。

今回のコースは約150年ぶりに整備開通された太良嶽山 金泉寺への参道。参道と言ってもその距離は8.5kmにも及び累積標高は900mと日本一長い参道とのこと。歩くと約5時間かかる距離で、ひとつの山を登る道のりだ。ハイカーも多く、金泉寺横には宿泊できる山小屋がある。ちょっとしたトレッキングコースになっている。

今回のこの参道をF.K.T.のコースにしたのは「少しでも知ってもらうことでここを通る人が増え、参道がいつまでも残るように」という思いから。瑠偉くんが走ることで参道保全にもなるっていいね。 下記の写真は今回のF.K.Tのコースとなった参道で昨年行われたイベント「MAIRU」。ハイカーとランナーがスタート時間をずらしてゴールの金泉寺へと向かう。一人でも多くの人に歩いてもらう。

image 金泉寺まで2つの鳥居がある。これは一の鳥居。
image ハイカーも一緒に登る。
image 地元のトレランコミュニティ「長崎トレランパーティー」が初心者をサポート。
image ゴールの金泉寺。

現在このコースの最速ラップは地元のトレイルランナー小林誠治さん(マラソン2時間10分という記録を持つ)の52分45秒。このタイムをどれだけ短縮できるか。ポッドキャスト収録の時、瑠偉くんは50分を切りたいと言っていたが、僕は誤って「では45分で頑張ってください!」と言ってしまったw おっさん、おいおい!だよ。そういうわけで、なぜかF.K.T.の目標が45分に設定された中で瑠偉くんがスタートした。

当日のコンディションは雨。にもかかわらず瑠偉くんが叩き出したタイムはなんと45分40秒。45分切りとはいかなかったがちゃんと45分に乗せてくるあたりは凄い!誠治さんの52分も並みのランナーでは敵わないタイムだと思うが、世界一のレベルは凄まじかった。いやー、いいもの見させてもらったー。今度機会があれば走ってみたい。自分が走るとさらにこのタイムの凄さを実感するに違いない。

image 金泉寺本堂。霧と相まって荘厳な感じだ。
image 霧の中から現れた瑠偉くん。すごいスピードで駆け下りてくる。
image 本当に45分台に乗せてきた、、すごい。
image 左から、小林誠治さん、金泉寺住職、上田瑠偉くん。

ゴール後は金泉寺横の山小屋でふるまいが出された。雨風が強い中、野外でピザを焼いてくれたり、おにぎり、そば、だご汁、しゃぶしゃぶと温かい料理をいただいた。みんな冷え切ったのでこれはありがたかった。

image 今回のF.K.T.のまとめ役の一人、長崎トレランパーティーの牧島さん。
image ランカメの判田くん。彼も九州のトップランナーだ。
image こんなところでしゃぶしゃぶが食べられるとは。
image しかしながら瑠偉くん、しゃべりがうまい!

収録の時に瑠偉くんが「走ることは僕を豊かにしてくれる」と言っていた。
ほんと、いい言葉だなと思った。

マイル完走に向けての練習はやはり長時間・長距離走ること。

ポッドキャスト 7trailsラジオ練
epi38 ローカルに世界一の目標を刻み続ける山岳ランナー上田瑠偉くん。
https://open.spotify.com/episode/36MmzaeQ6LNui34xRrYE4E?si=9d79376efdb84295

瑠偉くんの公式WEBサイトの「Japan F.K.T. Journey」ページにて日本各地のF.K.T.の記録が見られる。GPXデータもダウンロードできるので挑戦してみて!
RUY UEDA official site
https://ruyueda.jp

2023年2月・最近のレース結果

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左からななちゃん、バーチー、俺、カズヤ、ハットリさん。

玉名いだてんマラソン
2023年2月26日(日)
フルマラソン・3時間39分41秒

福岡マラソン後にもう一回ちゃんと練習してマラソン挑みたいということで衝動的にエントリーした大会。玉名名産のイチゴとトマトが食べられるという、贅沢でありながらエントリー費は昨今の高騰した他大会よりは格安。結果はというと、、たいしたことはない。気管支炎になってせきがひどく、二日前にふくらはぎを肉離れしたという言い訳をさせて、お願い!

テキスト・写真/石川博己

プロフィール

image台風の中でも山に走りに行くよw

石川博己 HAPPY HIKERS 事務局メンバー。本職の持ち出しでデザインや写真を担当w。本コラムでも書いているきっかけで48歳よりランニングに目覚める。2022年に熊本で開催された100マイルレース「球磨川リバイバルトレイル」にて悲願の100マイルレースを完走。ちまたでマイラーと呼ばれるw

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