Echoes

連載脊振山麓の山小屋から

ニワトリの声で目を覚まし、
虫とカエルの声を聞きながら眠りつく。
あなたは山暮らしできますか?

1ニワトリ社会は
人間社会の写し鏡

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ボタボタと汗を垂らしながら石ころを拾い集め、林道にぽっかりと空いたいくつもの穴をその石ころを詰めて埋めていく。昨日からそんな途方もない作業をひたすら繰り返している。

そう、先日の豪雨で家の前の林道は地面が削られて、路面にいくつもの穴が空いてしまい、ぼくはその復旧作業に追われているのです。

「え? そんなの自分で復旧するの?」と思った方もいることでしょう..

通れないと生活に支障が出るいわゆる生活道路は、行政が優先的に復旧作業をしてくれるのが一般的ですが、それはあくまでも公道(県道、市道、町道)の場合であって、ぼくが作業をしているこの林道は私道なのだ。どれだけ生活に困ろうが、行政は決して手を貸してはくれない。

まるで「お宅は好きでそんなところで暮らしいるんだから、自分たちの力で生き抜いてください。」と言わんばかりの対応..

ん?

そんなところ?

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はい、我が家は山の中にポツンとあります。

昔から自然が好きで、30代で山歩きを始めたのをきっかけに、静かな自然の中で暮らしたいと考えるようになり、4年ほど前に家族3人で中山間地域いわゆる里山に移住しました。

あ、ちなみにこのコラムのタイトルに含まれる「山小屋」は、登山で利用する山小屋のことではなく、我が家のことです。深い意味はなく、山の中にある山小屋みたいな家なのでそう呼んでいます。

そんなわけで、今ではすっかり山暮らしも板につき、ほげた穴を塞ぐという何とも理不尽な重労働も慣れっこになりつつあるぼくですが、その代わりにめっきり山歩きはしなくなりました。

なにせ365日寝ても覚めても山中にいますから。

それに、移住してから少しずつ動物が増えて、終日の外出がしづらくなったのもあります。テント泊なんてもってのほか。それでも昨年は家族で2ヶ月間の海外生活をしたり、自由にやってるので、結局は自分の中でハイキングの優先順位が下がったということなのでしょうね。

諸行無常。それもよしとしています。

せっかくなので、今日は山小屋の動物たちも紹介したいと思います。

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まずはニワトリ。現在は7羽(雌5羽)。

キレイでしょう?(親バカ)

我が家は自給自足を目指していて、採卵目的で有精卵を孵化させて育雛するところから始めたのが2年前。ハイカーには鳥が好きな方も多いと思いますが、やっぱりニワトリもかわいいです。飼育してみるとニワトリの印象はガラッと変わります。

ニワトリの先祖と言われる赤色野鶏(セキショクヤケイ)は亜熱帯いわばジャングルのようなところが生息地域なので、ニワトリにとっても山暮らしは割と快適のようです。

そして、この子たちから学ぶことがたくさんあります。ぼくが尊敬する地域の養鶏家の方はこう言ってました。

「ニワトリ社会は人間社会の写し鏡のような存在だ。」と。

ニワトリはオス1羽に対してメス10羽ぐらいの比率だと群れが安定すると言われています。完全なるハーレム社会です。(人間社会の写し鏡じゃねえじゃねえか...)

メスは1日中下を向いてエサを探してはついばむという行為を繰り返し、オスは少し離れたところで周囲を監視しながら、それをずっと見守っています。

ニワトリのオスはレディファーストが半端じゃありません。男性諸君にはすぐにでも見習っていただきたい。

しかし、交尾が下手くそでメスに本気で嫌がられているオスがいたり。(やっぱり人間社会の写し鏡じゃねえか..笑)

また、毎日4〜5個は産んでくれる卵は、ぼくら家族の大切な栄養源の一つなので、与えるエサについてもなるべく自然なもので自家製の配合飼料を作っていて、エサが違うと卵の味や色も全然違うので、食と体の関係なんてことも考えるようになりました。

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その他にも野生動物や森から学ぶことも多く、自然がより身近な存在となったことで、自然との関わり合い方も考えるようになりました。

とまぁこんな感じで、歳食ったせいもあってか、都会で暮らしていた頃には考えもしなかったことを時折考えるようになりました。

実際のところは、自分たちの暮らしのことで精一杯なので、色々と考えを巡らせつつも、その中で無理なくできることから少しずつ取り入れている感じです。←今ここ。

このコラムでは、そういったぼくが今の暮らしや自然から教わったことをシェアしていけたらいいなと思ってます。それとここ数年はヨガにどっぷりなので、らしくもない哲学的な話もライトにお話できたらなと思ってます。

窮屈なのはキライなので、誰かに何かを押し付けるつもりはありません。気軽に読んでいただき、そういえばまっつんがあんなこと言ってたな。なんて思い出してくださることがあれば本望です。

本当はヤギの紹介もしたかったのですが、無理しなくても必ず登場することになるので、ヤギのつむじとうなじの話はまた今度。

最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回。

テキスト・写真/松本謙介

プロフィール

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松本謙介(まつもと・けんすけ) 30代前半に夫婦で九州の山々を歩き出す。会社経営に行き詰まっていたこともあり、一人で自然の中を無心で歩くことが恰好の現実逃避となり、次第に昼夜を問わず連日のように山に通いつめるようになる。2019年から里山へ移住し、山行欲がすっかり減退。現在は自給自足を目指しながら家族や動物たちとのんびり暮らす。数年前からアシュタンガヨガに傾倒。

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