Echoes

連載脊振山麓の山小屋から

ニワトリの声で目を覚まし、
虫とカエルの声を聞きながら眠りつく。
あなたは山暮らしできますか?

2南インドマイソール滞在記

今回は脊振山麓ではなく、デカン高原からこんにちは。

既に帰国してますが、実は昨年12月〜1月の2ヶ月間、南インドのマイソールという都市で家族と2ヶ月間生活していました。

マイソールは南インドの中でも南に位置するので、インド全体で見るとかなり下の方になり、南インド一の観光都市と言われています。

image マイソールといえばマハラジャの宮殿であるマイソールパレスが最も人気

とは言っても、2ヶ月間も観光しにいったわけではなく、ヨガ修行のためです。

マイソールには、以前からぼくら夫婦が学び伝えているアシュタンガヨガの総本山があるため、2020年から通い始め、今回で3度目の渡印となります。

インドの山奥で修行して〜♪(レインボーマン主題歌より)

そう、昔から正義の味方はインドで修行すると決まっているのです。(わからない方が多いと分かってます。すいません。)

冗談は置いといて、お釈迦様もインドで悟りを開いていますし、インドでは昔から多くの人々が修行をしていたに違いありません。そのようにインドは宗教や哲学などの歴史が深く、ぼくらはヨガを深めていく中で、自然と導かれたように感じてます。

昔はどうだったかわかりませんが、ぼくらの修行は現地にある総本山のシャラ(ヨガスクールみたいなところ)に毎朝通い、修練を積むというスタイルです。

そこでは、2ヶ月間のプログラムが組まれていて、基本的には毎日いわゆるポーズの練習をして、日によっては先生の講話を聴いたり、チャンティングといってマントラというお経を唱えたりします。

image 修行の場となる体育館のような大きな建物施設

通常、午前中の2〜3時間で終わるので、毎朝5時ぐらいに起きて、スクールまでバイクで行き、昼前には部屋に戻ってきます。

そして、午後はフリー。ぼくはカタカタとパソコン仕事をして過ごし、妻は主に本を読んだり、娘は宿題をしたりYouTubeを見たり。。

ちなみに、うちの娘はまだ小学三年生です。一人で留守番させるわけにもいかず、結果的に学校を休ませて一緒に連れていってます。

娘に2ヶ月も学校を休ませることを知ると、「絶対いい経験になるよね〜」なんて言われがちですが、当の本人は嫌で嫌で仕方ないのが実のところ。娘よ申し訳ない。

学校の話はともかく、2ヶ月も家を空けて家族で渡航するのはなかなか大変で、我が家には動物もいるし、ご近所さん、学校、親、友人など、周囲の理解が絶対的に必要です。

そんなわけで、2ヶ月間、ヨガの世界にどっぷりと浸かってきたわけですが、実はインドでのヨガ修行の半分は、こうした長期の渡航を遂行することや向こうでの日常生活の中にあります。

まず先にインドでの日常を紹介しましょう。

image ぼくらが借りていた部屋は3階建てで、1階は現地の人借りてる部屋、2階はオーナー宅、3階がゲストルームになっています。(家賃5万/月ぐらい)
image キッチンがあるので、基本的には自炊です。野菜、豆、スパイス、米、麺類などは普通に手に入ります。
image 一般的なスーパーマーケット以外にもこういった露店はまだまだ多いです。
image こちらは自炊したビジベレバス(南インド版おかゆ)。胃腸に優しいスパイスがたっぷりで、ローカル食堂や家庭の朝食で親しまれています。

ちなみに日本から米や味噌をはじめ、食材を大量(30kgぐらい)に持って行ったため、自炊はほとんど日本食でした。

個人差はあると思いますが、日本人が現地食だけで乗り切るのは胃腸的に無理だと思っていて、ぼくらは以前に食中毒で痛い目にあっているので、今回は特に食生活には細心の注意を払って、外食を減らしました。

結果的に今回は胃腸の調子を崩すことなく過ごせましたが、自炊しているにしても、日本にいる時と同じようには作れないので、後半は食べたいものが食べられないストレスはやっぱりありました。

image その他にも南アジアや東南アジアはフルーツが豊富で安く手に入るので(日本の1/10ぐらい)、バナナをはじめ、グレープ、マスカット、パイナップル、メロン、チクー、パパイヤ、スイカなど、フルーツは毎日食べてました。

ちなみに外食する場合は、基本的にマサラ(要する辛い)以外のお店はほとんどありません。

せっかくなので、現地食も紹介しておきましょう。

image ビリヤニ。どんぶり2杯分ぐらいあります。ビリヤニは家庭でも作られますが、ご馳走の部類です。
image 南インドと言えばミールス。というぐらい、ここ数年で日本のインド料理店で見るようになりましたね。基本的にどこの店もわんこそばスタイルで、なくなったら拒否しない限り、ほぼ勝手に追加されます。
image こちらはターリーといって、大皿という意味で、一つ前のミールスと基本的には同じ料理ですが、こうして食器に盛られたものは北インドのスタイルで、南インドの場合は、これがバナナリーフに盛られます。
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image こちらは地元民ばかりのローカル食堂のミニティファンセット(50円ぐらい)。プレートに何品かティファンを乗せてくれます。クレープみたいなのは豆と米で作られたドーサ。その他に味噌汁のように親しまれているラッサムやサンバル、揚げ物、スイーツなど。
image 稀に見かけるチャイニーズレストランのヌードル。

いわゆる日本のカレーみたいなものもありますが、現地の人が食べるローカル食堂にはありません。

カレーはあまりないけど、どこに行っても大体カレー風味と思ったらOKです。

image 最後は屋台。こうした屋台も道端に多く、その場で食べたり、持ち帰る人など様々です。こちらはワダといって豆を使った揚げドーナツ的な感じです。もちろん辛いですが、さらにチャットニーという辛いタレをつけていただきます。
image ベーカリー(パン&スナックなど)も街の至る所にあります。

インドはこうした個人商店の文化が根強く、コンビニ大手が参入できないそうです。

image インドと言えばチャイ。実はコーヒー文化もありますが、最も市民に親しまれているのはやっぱりチャイ。1杯20円〜40円ぐらい。
image チャイスタンド的な気軽な立ち飲み屋的な店もそこら中にあります。朝一番、仕事前にチャイを飲む人も多い。
image 最後にココナッツスタンド。街の至る所にあります。ココナッツは体を冷やしてくれるので、インドでは昔から飲まれているようです。
image 中のジュースを飲み終えたら、半分に割ってもらい、中の果肉をすくっていただきます。これがうまい。

次は街の様子。

インドの地方都市のリアルです。

image 経済発展中のインドでは、街の至る所で道路工事や建物の建築工事が行われています。人力多め。
image ご存知の方も多いと思いますが、インドは野良犬天国です。狂犬病にご注意あれ。これは首輪がついてるので飼い犬。
image ついでに野良牛天国でもあります。こちらはお祭りの特別仕様の牛で黄色いのはターメリック。
image ヤギもよく見かけますが、ヤギは肉用の家畜として誰かが飼っているようです。
image これはたぶん家です。こんな風にブロック積みにトタン屋根のような家もちょこちょこあります。貧富の差は半端じゃない。
image 道端には家庭ごみが平気で捨てられています。(ゴミ収集来るのに)それを牛、ヤギ、犬など、あらゆる動物たちが漁ります。

こういったゴミ問題に限らず、日本人にとってはこの不衛生な環境は正直つらい。それに慣れてしまうのはもっと怖い。

image 放課後や休日は大人も子どもも公園でクリケット(ほぼ野球)を楽しむ人が多い。
image 経済発展に伴い自動車も増えましたが、まだまだバイクや三輪タクシーが多い。
image ぼくらは毎回オートバイをレンタルして(月1万ぐらい)、滞在中は基本バイク移動です。今回からスクーターをやめて、ギヤ付きのオートバイにしました。

こんな感じで、日常的なことを紹介しようと思うと、異文化すぎてキリがなくなるので、この辺にしておきますが、インドは世界一旅行の難易度の高い国と言われていて、先進国の人にとっては許容しづらい文化が根強く残っています。

つまり、そんな常識や文化の違う国で日々生活をすること自体がものすごいストレスなわけで、そのストレスを軽減するには、180度違う文化や価値観を受け入れるしかありません。

道に落ちている牛の糞を知らぬ間に踏んでしまおうが、大きな紙幣で買い物をしようと思ったらお釣りがないから無理!と店員さんに一蹴されようが、オーケー任せて!と言われた約束が忘れられようが、シャワーのお湯が出なかろうが、部屋のコンセントの半分が使えなかろうが、留守中にサルが来て洗濯物をビリビリに破られようが、夜の道路で無灯火の車が逆走してこようが、とにかく平静を保ち事実として受け入れる。

ぼくらにとっては理不尽だらけの国インド。これに翻弄されるのではなくどう受容するか。

文化が違うからそう感じるのは仕方がないよ。という人もいるかもしれません。

本当にそうでしょうか?

同じ国の中でも争いは起こるし、家庭内で価値観の違いに苦しむこともあります。

そういった自分たちの中にある小さなエゴや偏見、固定概念を取り払い、ヨガに邁進することで心身を浄化していく。

それがぼくらのヨガ修行です。ヨガの話はまた追々。

テキスト・写真/松本謙介

プロフィール

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松本謙介(まつもと・けんすけ) 30代前半に夫婦で九州の山々を歩き出す。会社経営に行き詰まっていたこともあり、一人で自然の中を無心で歩くことが恰好の現実逃避となり、次第に昼夜を問わず連日のように山に通いつめるようになる。2019年から里山へ移住し、山行欲がすっかり減退。現在は自給自足を目指しながら家族や動物たちとのんびり暮らす。数年前からアシュタンガヨガに傾倒。

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