Echoes

連載Wanderlust

MoonlightGear福岡店の店長が綴る
現在と空想の汀を旅する山行記

1二人を照らした眩しい光

MoonlightGear福岡店をオープンする前も
後も福岡に帰ってきてからはずっと
バタバタしてしまい
今年の山行を振り返る時間もなく
過ごしていました。

ハイライト的な今年の山行はどれだろう、
なんて考えながら、、、
ようやく一人でゆっくり過ごすことが
できる時間を持てた。

六本松のスターバックスで思い返す。

窓の外から飾られた街路樹の光が
自分の思い出の引き出しを
照らしてくれている気がして。

ひとつやふたつこぼしてしまっても
気にせず突っ走ってきた2022年。

失敗した南アルプス全山縦走も
逍遥スタイルむき出しの鳥海山も
良い思い出。

でも一番記憶に焼き付いたのは
OMMJAPANのバディであり
私にMoonlightGearを叩き込んでくれた
東京店の魚岸との山行。
「八峰~不帰の旅」
東京店で7ヶ月ほぼ毎日、一緒に
過ごしてきた仲であり先輩。
二人で話し合い福岡に戻る2週間前に
後立山連峰を一泊二日で決定した。

天候に恵まれたこの日。
柏原新道からスタート。

紅葉シーズン真っ只中の贅沢空間を
順調に二人で歩いていく。
木の根が張り細かな凹凸が
繰り返される少し湿った地面。
途中から現れた石畳の階段に
暖色のかけらが散りばめられていて
綺麗だったな。

一気に二人で種池山荘に到着。
少し休んだ後いよいよ稜線歩きだ。

やや風が強く雲の動きも早い。
青、白、緑の世界に時折差し込む
陽の光が美しい。

image 風が強く雲やガスの動きが早い。景色が目紛しく変わっていく。

爺岳の稜線を歩く。
ハイマツすら靡く強風。
雲が多いせいか雷鳥がところどころに。
冬毛でふわふわした可愛らしい仕様に
なっている。

あっという間に冷池山荘に到着。
ここで昼食。
鹿島槍ヶ岳を見ながら小屋の
ラーメンを食す。

美味い!

image 長く続く稜線歩き。ガスは消えたり増えたり。

五竜岳を目指し再出発。
結構ガスが増えてきた。
視界が悪くなるなか
鎖場が多くなるキレットを慎重に進む。
陽が傾くのが早くなったな、と思いつつ
少し重くなった足を前に出していく。

魚岸と
「疲れたな~」なんて会話しながら
歩いているとそれまでガスで
真っ白だった世界がなぜか一瞬で吹き飛び
雲海の上に突き出る剱岳が見えた。

image 雲が吹き飛び突然現れた劒岳。その力強い姿に圧倒される。

沈みゆく太陽の柔らかな光に照らされる雲。
影となる剱岳の力強い姿。
その二つのコントラストが美しい。

今回の山行のハイライトだな、と
この時は思っていた。

そう、この時までは、、、

綺麗な景色って体力も回復させて
くれるんだな、と
思いつつ最後の長い登りを進んでいく。

やや暗くなった世界でヘッデンを
つけて周りを確認しながら
上がっていくと不思議な光景が。

五竜岳山頂付近で見たものは
早いスピードで夜空に登っていく満月。
太陽ほどとは言わないけれど
とても明るく眩しいくらいのその姿に
圧倒された。

昼間の風はどこへ行ったのか。

無音に近く
静まりかえった山頂の岩場で二人、
ただ黙って輝く月を眺めていた。

image 物凄く明るかった月。無音で時間の感覚もなくただ見惚れていた。

疲れていたし
お腹も減っていた。
でも二人が
無言なのはそれが理由じゃないと思う。

その場でどれくらいの時間を過ごしたか
わからないけれど
寒くなったのでとりあえず動き出す。

そのままなんとかテン場に到着し
すぐさま就寝。

翌日は順調に不帰ノ嶮を進み
白馬槍温泉を通過し
猿倉で下山。
一泊二日の山行は幕を閉じました。

image 2日目朝。広がる雲海が美しい。

でもやっぱり
あの月、
すごかったな。

いろんな景色を見たけれど
間違いなく今年のハイライト。

五竜岳山頂で見た月光。

その強くて眩しい綺麗な光は
二人へのご褒美だったのか、

ただ一つ
贅沢を言うなら
この時ばかりは男同士じゃなくて
女の子がよかったな(笑)

きっと魚岸も同じ気持ちだっただろう。

次回は九州の山に魚岸を招待して登ろうと思う。

テキスト・写真/横山誠二

プロフィール

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横山誠二(よこやま・せいじ) MoonlightGear福岡店店長
福岡県出身
線好き
美容師をやったり
建築の写真撮影など
線に対して強いこだわりを持つ。
山との出会いは写真をきっかけに
稜線に魅了されたから。
今年から雪板をスタート。
雪上にできた放物線に興味を持つ。

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