One Day

Day 120210410 / 晴れ

image ワイスホルンよりニセコ連峰を望む。これから日本海へ向けての縦走が始まる。

ニセコ連峰を縦走する、通称「ニセコオートルート」をニセコの友人たちとの春の恒例行事とするようになって6シーズン目となる。

「高い道」を意味する「オートルート」はモンブランやマッターホルンをつなぐ全長120kmにおよぶヨーロッパアルプスの人気ツアールートのことだが、「ニセコオートルート」はそのニセコ版で、日本海側の雷電山からアンヌプリまでの40kmほどのルートを指す。

ある日、友人の部屋にはられたニセコ全山の地図を眺めていると、これらの山を全部つないだスキーツアーができるんじゃないかと思いつき、友人にそのことを告げると、それが「ニセコオートルート」と呼ばれるクラシックルートだと教えてくれた。
ハイキングでは季節を問わず、いろんな山を歩いてきたので、いつかスキーを使っての縦走にも挑戦したいと思っていた僕にとって、「ニセコオートルート」はぴったりのチャレンジとなった。

スキーでの縦走がハイキングの場合と違うのは、登った後には滑る楽しみが待っていることだ。むしろ、滑る方がメインだという人もいるかもしれない。ただし、滑りを楽しむときに足かせとなるのが、背中にのしかかる重いバックパックの存在だ。宿泊道具や食料などにスキーのための道具が加わり、ツアー時のバックパックは重くなりがちだ。
眼前に広がる手つかずの大斜面も、バックパックが重すぎると滑るのはおろか、安全に降りていくのが精一杯ということにもなりかねない。

そこで、かねてから実践してきたUL(ウルトラライト)ハイキングとスキーツアーの組み合わせがその答えとなる。足元も大袈裟なプラスチックブーツやファットスキーではなく、細くて軽い板を柔らかくて快適な革のブーツを合わせたテレマークスキーを採用する。これを、ULテレマークスキーツアースタイルとでも呼ぶことにしよう。
とは言え、これは何も新しいスタイルではない。Patagonia社のイヴォン・シュイナードさんたちの時代には、雪のある山を自由に楽しむための代表的なスタイルだった。実際にシュイナードさんはテレマークスキーをするためにニセコを訪れたこともあったそうだ。

ニセコの山々を仲間とともに歩き、滑るとき、数十年前のテレマークスキーヤーたちが見たであろう同じ風景に自分自身を重ね、そこに時空を超え、脈々と受け継がれてきた、山と雪とスキーによる普遍の営みを感じずにはいられない。

テキスト/豊嶋秀樹 写真/Yoshitaka Toge

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