One Day

Day 1320220708 / 晴れ

image 斜里岳から続く尾根伝いのトレイル。何度も渡渉を繰り返す登り、羅臼岳を望む見晴らしの良い稜線、湧水が美しい小さな池など、変化に富んだルートが飽きさせない

6月末にようやく北海道から九州に帰ってきたと思ったら、1週間後にはまた北海道にいた。予定では幌尻岳へ行くはずだったのだが、天候不良により山域を変更することになった。天気が保ちそうなところということで選んだのは、つい2ヶ月前に10日間ほど旅行していた道東だった。

ハッピーハイカーズは九州がベースなのに、また北海道なのかという声が聞こえてきそうだ。それはそうなんですが、この連載は取材記事ではなくリアルな日記的なものとして書かせてもらっているので、事実を曲げるわけにもいかずということでご容赦ください。
実際、僕自身もここまで北海道に多く(長く)滞在する生活になるとは思ってもなかったと、言い訳させていただく。人生、わからないものです。
さて、斜里岳である。
知床半島の根元にひときわ美しく、まっすぐに天を突く槍のようなピークが印象的な独立峰だ。知床にはこれまで何度も訪れていたが、それはいつも雪のある季節だった。知床の雪の山は、雪というよりも氷の山だと聞いていたので、スキー目的だった僕は滑落を恐れてなかなか近づきにくい山の一つになっていた。斜里町から南下するたびに、その美しい山容に見惚れて写真を撮って終わりということが何度かあった。

そして、今回は予定していなかったにもかかわらず、とうとう斜里岳に登る機会を得た。
1,547mと標高的にはさほどではない山だがまったく飽きることのないハイキングだった。
沢伝いの旧道を何度も渡渉しながら一気に上り詰めると、緯度の高いところにある山なので森林限界が低く、稜線に出た途端に視界が開ける。北アルプスのような稜線のアップダウンを経て山頂に到達すると、眼下には雲海が広がっていた。そして、その向こうに羅臼岳が頭を覗かせている。雲がなければきっとロシア領である国後島も見えたことだろう。
吹き渡る強い風を全身に受けるこの瞬間もやっている戦争のことを思うと気持ちが沈んだが、斜里岳の山頂からの風景はいたって世界は平和そのものという感じがして、そのことがかえって不思議な気分にさせた。

テキスト・写真/豊嶋秀樹

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