One Day

Day 1520221019 / 晴れ

image 10月も半ばを過ぎているというのに、この海はまだ夏の匂いを含んだままだ。宮崎県の南端にあたる海岸線は、太平洋を遥まで望む。

サーフィンをやるようになって、僕の九州の地図はリニューアルされた。
それまでの地図は、山と山の連なりを中心に島は広がっていたけど、海岸線がぐるりと取り囲んだ中に島が現れるようにもなった。
福岡の海に波があるときは近くの海に入り、そうでない時は、宮崎や鹿児島へショートトリップをかねて出かける。
車が小さいということと、目的地へのプロセスも楽しみたいという理由で、高速道路を利用することはほとんどない。確かに高速道路は移動時間を短くしてくれるけど、道中にあるほとんどすべてをすっ飛ばしてしまう。それはもったいないことだと感じる。”Time is money”というと、時間がもったいないからさっさと移動することとイメージしがちだけど、高速道路を使わず、Google mapを頼りに下道を走ることで得ることは多い。あることも知らなかった石仏の数々、聞いたことのない古墳や遺跡、観光客はわざわざ来ない滝や鍾乳洞など、高速道路からは見えない風景がたくさんある。そんな通りすがりの好奇心にしたがって車を停めると、そこはすぐさま僕の地図に書き加えられる。

高速道路を例に移動時間と機会喪失の関係を考えるとそこにあるパラドックスが見えてくる。新幹線は長く利用できる「こだま」の方が運賃が安く、長く船旅を楽しめるフェリーより、あっという間に着いてしまう高速艇の方が高い。いや、待てよ、LCCなどの飛行機が他の移動手段よりも安くつくのは、その移動がつまらないからということなのだとしたら僕の屁理屈は成立しない。移動の手段は皆それぞれの事情によって選んでいるのだから僕がとやかく言うことはない。

海抜の高いところから眺める海の景色が好きだ。
少なくとも高速道路ではそんなところがあるからと好きに車を停めて眺めたり、写真を撮ったりすることはできない。海も眺められずに料金は取られるなんてナンセンスだ、と遥か先に伸びる水平線につぶやいてみても、穏やかな海はただ青いばかりで返事は返ってこなかった。

テキスト・写真/豊嶋秀樹

facebookページ 公式インスタグラム