One Day

Day 1820230214 / 晴れ

image 2月になると夜明けがずいぶん早くなってくる。あたりはまだ雪で真っ白だが、少しばかり春の気配を感じる

スキーをするために冬は羊蹄山の麓で暮らそうと決めたのだが、ここでの暮らしにはスキーの前にやらないといけないことがある。「除雪」だ。

除雪については、時間が指定されていたり、どけた雪をどうするのかなど、市町村ごとにそれぞれのルールがあるし、また各家庭や個人ごとに様々な流儀のようなものが存在する。
ほぼ毎日のことなので、身体的にも精神的にも負荷が大きく、除雪が隣近所や町内の揉め事の原因となることも少なくないと聞く。 札幌市においては、ひと冬の雪対策費用が200億から300億にまでなるという。春になれば溶けてなくなってしまう雪ではあるが、社会活動にとっては厄介この上ないものなのである。
スキーヤーも例外ではない。「明日の雪はいいぞ」と思うと同時に「少し早く起きて除雪しないと」という考えはセットでやってくるの。
僕の住む羊蹄山麓の真狩村では、午前7時半くらいに村の除雪車が家の前の道路をガーッと通り過ぎてキレイにしてくれる。ひと口に除雪車と言っても種類は様々で、子供の頃に夢中だった「働くクルマ」が次々にやってきては、雪を押し分けたり、すくい上げたり、跳ね飛ばしたりして雪を道路脇によけていく。そして月に何度か、もうこれ以上道路脇に積み上げられないぞというところまでくると「排雪」と言って、道路を片側通行止めにして、何台もの重機がダンプカーに雪を乗せて、雪を満載にしたダンプカーが町外れの雪捨て場に文字通り雪を捨てに行くという作業が行われる。この排雪作業は激しく動き回る巨大な重機にやや恐怖を感じるくらいで、しばし見入ってしまう。

そんなわけで、雪の日の僕の仕事は、家の軒の雪を落としたり、車庫や家のまわりの雪を除雪車がやってくる7時半までに道路の方へ押しやっておくことだ。「ママさんダンプ」と呼ばれるソリとショベルの両方の機能を兼ね備えた平和な除雪道具を使って、何度も雪を道路へ運ぶ。お隣さんやその向こうの並びの家の人たちも同じように作業している。

こうして、雪が降り止むまで毎日繰り返される雪国の朝は、どこか儀式めいていて、重労働には違いないのだが、どこか神聖な雰囲気もあって僕は嫌いじゃないのだった。
雪の多い日には汗ばむくらいで、スキーの前の準備運動にもちょうどいい。
2月になると、ちょうど除雪中に陽がのぼってくるようになる。そして、羊蹄山の方を見てひとりニンマリとしてしまう。
「いい雪だ。今日はいい日になりそうだ。」
そう、除雪もスキーライフの大切な一部なのだ。

テキスト・写真/豊嶋秀樹

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