One Day

Day 2520231026 / 晴れ

image 季節外れの室堂は観光客もまばらにひっそりとしていて、みくりが池がいつもよりも神秘的に見えたのは気のせいか

室堂へは随分と久しぶりだった。5、6年ぶりだろうか。

登山を始めたての頃に剱岳を目指してきたのが最初だったはずだ。
春スキーを楽しもうと、剱沢キャンプ場にテントを張りっぱなしにして10日間ほど滞在したこともある。
ULハイキングの方法と哲学に魅了され、すっかり軽くなった装備できた北アルプスを日本海の親不知から入って穂高まで南下し、そこで折り返して剱岳まで歩いたこともあった。その時のゴールも室堂だった。

ハイキングの楽しみのひとつに登山口の文化がある。
出発時にはそそくさと通り過ぎることが多いが、下山時には登山口のレストハウスでの食事やお気に入りの温泉が目指して、つい駆け足になってしまう。
登山口の売店や食堂、温泉など、そこに立ち寄ることもハイキングの目的のひとつになっている。

北アルプスの上高地と室堂は、そんな数ある登山口の中でも別格だ。
登山者やハイカーだけでなく、そこに観光客も合わさって、ハイシーズンともなるとゲンナリするほどごった返している。しかし、それだけ人がやってくるには理由がある。そう、やっぱり上高地も室堂もいかにも北アルプスという風光明媚な場所なのである。だから、そういう場所にはシーズンオフに訪れるのが一番だ。

10月末の室堂は、紅葉シーズンと初滑りスキーの間の中途半端な時期だ。狙ったわけではなかったけれど、そんな時期の室堂は最高だった。今回は僕の好きなみくりが池温泉に泊まった。美味しい食事と極上の温泉、そして最高の景色を心ゆくまで楽しんだ。

たまには山に登らず登山口を楽しむのも良いものだと、贅沢な気持ちになった。

テキスト・写真/豊嶋秀樹

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