Web Magazine for Kyushu Hikers Community
ニュースなどでも度々話題になっているので知っている方も少なくないと思うが、今年のニセコは例年にないほど混み合っている。コロナ禍による入国制限が解除されたことに円安が追い風となった。ゲレンデのリフトには長蛇の列はもとより、ニセコの周辺道路では朝夕の交通渋滞が酷い。ゲレンデだけにとどまらず、その余波はバックカントリースキーにも影響し、天気の良い日にはメジャーなポイントの駐車場からは車が溢れている。
そういうわけで、メジャーなポイントをインバウンドの皆さんに譲り渡し、僕たちは地味な低山を目指す。そういう山は、アクセスが悪かったり、駐車スペースがなかったり、滑った後の「お帰りルート」が厄介だったりするわけで人気がないのだが、それは決して雪や斜面が良くないということを意味するのではない。ノートラックの斜面へと競争することもなく、白い森のハイキングそのものを楽しみながらゆっくりと登っていくと、ほどなく稜線歩きとなり、歩き疲れる前に山頂に着くというのも低山ならではである。もちろん山頂には僕たちしかいない。
あっちも良さそうだ、こっちも捨て難いと、皆で斜面談義で盛り上がった後に滑ることに決まった沢は決してちっぽけではない。標高差は200mくらいだろうか、ノートラックの斜面にどんなラインを分かち合おうかと話し合う。まるで、詰め合わせにされたケーキの箱を開けた時のように、真剣かつ平和的な協議の後、僕たちは順番に深い雪の中へ滑り降りていく。
残り物には福がある。
さて次はどの低山を滑りましょうか。
テキスト・写真/豊嶋秀樹