One Day

Day 320210622 / 晴れ

image 日本海に面した福岡でのサーフィンで美しいサンセットタイムを逃す手はない。これから日没までの極上のひととき。

1月に福岡を出発してから、冬の間に一度も戻らなかった。おかげで、今年のスノーシーズンはいつもよりもずいぶんと長く感じられた。ようやく福岡へ帰ってきたときには、もう6月になっていた。

5月の鳥海山でパーフェクトなコンディションの斜面を滑ってしまうと、もう、今シーズンはこれでいいかなという気分になった。その気があれば滑れる山はまだたくさんあったし、例年だとしつこく粘っていつまでも滑っていただろう。僕にとって、それだけ春スキーは魅力的だった。しかし、そんな気持ちを振り切らせ、スキーにお別れのベースワックスを塗らせる強力なカウンター勢力がサーフィンだった。

なんでもそうだけど、僕は何かを新しく始めてもすぐに夢中になるわけではなく、なんとなくやり続けているうちにある時点でブワッと火がつくタイプだ。サーフィンもまさにそんな感じだった。冬はスキーに行ってしまう僕にとって、サーフシーズンがそろそろ終わろうという去年の年末にかけてメラメラと火の手が上がり始めた。

波が続きそうだという予報をたよりに、しばらく宮崎へ行ってしまうというのが僕のスタイルだった。しかし、去年から始まった例のヤツの影響で、自由に他県の海へは行きづらくなった。よし、この際ということで、福岡の海をいろいろと見てみようと思いたった。

日本海に波があるのは、主に冬だ。冬型の気圧配置は、福岡の海に波を、ニセコの山には雪をプレゼントする。では、夏の福岡の波はどうだといえば、ないときはずっとない。下手すりゃ、1ヶ月間何もない。そして、気圧や台風の影響で波があるぞ!となっても、それはほんのつかの間のできごと。数日、いや短ければ数時間で海はもとの静寂に戻ってしまう。

そんな福岡の夏にサーフィンをするには、こまめに波をチェックし、波があるときにはただちに海に向かえるように普段から自分の生活を整えておかなければならない。
それは要するに、サーファーになる必要があるということだ。
自転車の修理やベランダの植物の手入れをし、空き瓶や段ボールをリサイクルに出し、できる仕事は波のないうちにどんどん進めておく。もちろん、いわゆる仕事も忘れずに。
そうやって福岡の夏の海は、僕をサーファーにしてくれた。
断っておくが、決してサーフィンがうまくなったというわけではない。
サーファーというライフスタイルを与えてくれたということだ。

今年もまだ少し自由ではない時間が続きそうだ。
でも、そんなに気分は滅入っていない。
なぜなら波のない日にしかできないことがいろいろとあるからだ。
来るかもしれない波に備えて、今日やれることをコツコツやるという毎日は、それ自体が楽しいものなのだ。
波のない海は、そう僕に教えてくれる。

テキスト・写真/豊嶋秀樹

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