Web Magazine for Kyushu Hikers Community
北海道の東の果て、根室を旅するのはこれで三度目である。
北海道を列車で横断していると、車窓の景色のほとんどが農場や牧場が広がっているばかりで、やや退屈になってくる。帯広を過ぎ釧路へと近づくと、不意に海が視界に飛び込んできて、ハッとする。そして、列車はしばらく海岸線に沿うように走った後、釧路湿原を覆う霧の中へ飲み込まれた。
釧路でレンタカーを借りて、霧多布岬へ立ち寄ってラッコの姿を確認したのちに、目的地である根室へ向かった。
そして、もうこれ以上進めないというところが納沙布岬だ。眼前に広がる海の向こうに見えるのは、国後、歯舞の島々だ。ロシアである。
日本から他国を肉眼で見れる場所は、納沙布岬の他、与那国島からの台湾、対馬からの韓国の三箇所のみということだ。
見えているその景色が、外国であるという事実に不思議な気持ちになるのは、陸地で接する国境を持たない島国ならではのことかもしれない。
そんなこちらの感傷とは無関係に、あちらこちらへと自由に飛び回る海鳥たちに国境は存在しない。そしてさらに不思議な気分に捕まってしまう。
水面にぷかぷかと浮かんでは潜るラッコに聞いてみよう。
そっちの世界はどうですか?と。
テキスト・写真/豊嶋秀樹