One Day

Day 920220103 / 晴れのち風雪

image ツエルトのバタつく音で目を覚ます。気圧の谷の通過とともに、風雪は強まっているようだ。武奈ヶ岳を目指すものはおらず、そそくさと撤収準備に取り掛かった

新年のハイキングは、琵琶湖をのぞむ比良山系となって数年たつ。
関西の仲間との恒例となっている新年会があるからだ。
毎年、お盆と正月に同じ場所で開催していて、今回で12回目を数える。
ハイキングといったが、みんなで一緒にハイキングをするわけではない。
宴会が目的の集まりなので、ハイキングはその宴会場へ辿り着く方法でしかない。
集合時間もアバウトで、基本的には現地集合、現地解散だ。唯一のルールは「一品一芸」の持ち寄りということだけ。「一品」はもちろん食事をさすが、「一芸」は芸でなくても、書き初めの書道セットだったり、占いのためのパワーストーンだったり、宴会を盛り上げるためのレクリエーションならなんでもOKだ。もちろん一曲歌ってくれればさらにヨシ。

場所もいつも同じあたりなので、日程を決めるのが仕切り役の唯一の仕事。あとは、すべて「いつもどおり」でことが済むので楽なもんである。これが恒例行事のいいところだろう。とはいえ、集まる面子の顔ぶれは季節や年によってバラバラだ。皆勤賞もいれば、夏しか来ない、今年は家族サービスでパス、などなど。常連メンバーに連れられて、初めて来てくれる人も少なくない。誰が来るのかは、当日そこに行ってみなければわからないし、夜遅く真っ暗になってからヘッドランプをつけてやってくる者もいる。
そんなイージーさが長続きの秘訣かもしれない。

誰にもお膳立てしてもらわなくても、みんなで楽しむために自分のことは自分で面倒を見る。自立したハイカーには、自由という表現がよく似合うのだ。

眼下には琵琶湖が広がる。ここはどんなグランピングにも引けを取らない、無料で自由な隠れ家だ。日が暮れると満点の星空と琵琶湖を縁取る夜景のオプション付き。そして、雲海から昇る朝日が目覚まし時計だ。

新しい年の空中座敷での宴は、不思議な異次元感とともに、山間の夜の闇の中を漂い続ける。
さて、今年はどこを歩こうかと、ほろ酔い気分で想いを巡らせる。
宴はまだ始まったばかりだ。

テキスト・写真/豊嶋秀樹

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